「体脂肪を燃焼するのに有酸素運動が良いって本当なの?」
「有酸素運動で痩せるのかな?」
こんな疑問が解消できる記事を書きました。
少し難しそうな生理学の言葉も出てきますが、読み進める事で身体の中で体脂肪が燃焼する一連の流れがわかります。有酸素運動で体脂肪を燃焼したい方は、この一連の流れを理解した上で今後のダイエットに取り組んで頂ければと思います。
結論 体脂肪は有酸素運動でエネルギーに使われるので減らせる
上記の結論は、人間の体内で起こっている身体のメカニズムを知れば納得できます。
人は何もしなくても生きているだけで基礎代謝としてのエネルギーを消費していますが、蓄えられている体脂肪をエネルギーとしてより効果的に使う為には活動代謝を上げる必要があります。活動代謝を上げる方法がご存じの運動です。
ではどのようにして体脂肪が燃焼されているかあなたはご存じでしょうか?
身体の中で体脂肪が燃焼される為には大きく3つのプロセスを経てエネルギーとして使われます。
①分解⇒②運搬⇒③燃焼 です。
①分解の過程では運動などで交感神経が優位になり、副腎髄質ホルモンと脂肪分解酵素の働きによって蓄えていた体脂肪(中性脂肪)が遊離脂肪酸となって血中に出てきます。
②運搬の過程ではこの遊離脂肪酸が血中を通って細胞の中のミトコンドリア内に運ばれます。
③燃焼の過程ではミトコンドリア内で酸素を利用してエネルギーが作られる酸化機構と言われるTCA回路と電子伝達系を経て、最終的にはATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーを持つ分子が産生されます。
すなわち脂肪燃焼とは体脂肪からATPを作り出す①②③の一連の流れの事です。酸素を取り込みながら行う有酸素運動は①②③を必然的に行う事になるので、体脂肪を燃焼するのに適しているのがお分かり頂けたかと思います。糖質や脂肪などからエネルギーになるATPを産生し続ける事で僕らは生き続けることができます。体脂肪がエネルギーとして使われるためには別の経路もありますが、主にこの①②③の過程を経て身体の中の体脂肪は生きるためのエネルギーとなって使われているのです。運動していないような安静時でも、糖質や脂肪を燃焼しながらエネルギーを作り続けているのですが、運動などで活発に動いた方がこの3つのプロセスを高める事になるのでより体脂肪を燃焼してエネルギーに変えられます。
以下で①②③をもう少し詳しく解説します。
①体脂肪の分解
まずは体脂肪である内臓脂肪や皮下脂肪を分解して血中に脂肪酸として取り出さなければ脂肪燃焼が進みません。その為には脂肪分解酵素であるホルモン感受性リパーゼを活性化させる必要があります。
その活性を促すのが副腎髄質ホルモンであるアドレナリンやノルアドレナリンです。
アドレナリンやノルアドレナリンは仕事や人間関係などでストレスを受けても放出されます。運動やトレーニングも広義で言えば身体にストレスを与える行動とも言えますが、アドレナリンやノルアドレナリンを放出するなら身体に良い影響を与えて脂肪も燃焼させられる運動で放出したいところですよね。
運動以外にもアドレナリンやノルアドレナリンが分泌される飲食物があります。
【アドレナリンやノルアドレナリンが分泌されやすい飲食物】
⑴カフェイン
コーヒーなどに含まれているカフェインを摂取すると交感神経が働く事でノルアドレナリンが放出します。
交感神経が働くので、就寝前にはなるべく控えた方が良いと思います。摂取タイミングとしては運動1時間前くらいが有効だそうです。
⑵カプサイシン
唐辛子などに含まれているカプサイシンでもアドレナリン分泌を促進します。
唐辛子を食べると辛くて、汗が出て来たりしますよね。カプサイシンを摂り過ぎてしまうと粘膜が傷つき、喉や胃が荒れたり、吐き気や嘔吐・高血圧などの健康的な被害を引き起こすことがあるので摂りすぎには注意しましょう。
茶カテキンも脂肪燃焼におすすめ
緑茶などに含まれている茶カテキンも脂肪消費に働く体内酵素を活性化させ、脂肪の消費を亢進するそうです。
②体脂肪の運搬
血中に出てきた遊離脂肪酸が細胞内にあるミトコンドリアに運ばれることでエネルギーとして代謝されます。
細胞内の小器官であるミトコンドリアは1細胞あたり100個から2000個程度含まれます。
遊離脂肪酸は細胞内でアシルCoAとなりカルニチンの働きによってミトコンドリア内に運ばれます。少し難しい説明になりますがミトコンドリアは外膜と内膜の二重の生体膜によって囲まれています。アシルCoAがこの外膜と内膜を通過するのにカルニチンという物質が必要になります。
カルニチンについて
〇カルニチンは身体のほぼ全ての細胞に存在しており特に骨格筋や心筋に多く存在しています。
〇加齢によりカルニチンの体内合成能が低下することが認められています。
〇日本人は西洋人に比べてカルニチン保有量が少ないと言われています。
〇カルニチンを多く含む食品は羊肉や牛肉などの赤肉に多く含まれています。
それじゃあカルニチンを多く含んだ羊肉や牛肉などの赤肉を多く摂れば、カルニチンが多く摂れるから脂肪をより運搬できて良いんじゃないのと考える方もいるかもしれません。
でも、ちょっと待った!!なのです。
確かにカルニチンを多く摂ることでカルニチンの働きが増して、脂肪がミトコンドリアまで運搬されやすくなる可能性は上がると思います。ただし、牛肉などの赤肉の過剰摂取には懸念されることがあります。
それが発がん性です。
がんの研究機関の中で世界トップであるIARC(国際がん研究機関)がRedMeat(赤肉)の消費を上から2番目のグループ2Aに入れています。
グループ2Aは【人にたいしておそらく発がん性がある】 このグループに入れているのです。
赤肉(レッドミート)とは牛肉、豚肉、羊肉(ラム、マトン)、馬肉、山羊肉を含む全てのほ乳類の肉を示します。
鶏肉や七面鳥などの家きん類の肉は含みません。脂肪分が少ない部位を示す「赤身肉」とは異なります。
さらにIARCが公表している最も上のグループ1に入っている物質の中にハム、ソーセージなどの加工肉があります。
加工肉は「人に対して発がん性がある」と公表しています。たばこと同じグループです。
加工肉については、主に大腸がんに対する疫学研究の十分な証拠に基づいて人に対して発がん性があると判定されました。
このように農林水産省のWEBページに記載があります。
詳しくはコチラ⇩
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/meat.html#iarc
では、もう少し客観的に見る為に日本人ではどうなのか調べてみました。
国立がん研究センターHPでは以下のように記載がありました。
長くなりますが、以下一部抜粋
2013年の国民健康・栄養調査によると日本人の赤肉・加工肉の摂取量は一日あたり63グラム(うち、赤肉は50グラム、加工肉は13グラム)で、世界的に見て最も摂取量の低い国の一つです。
当センターは、国内の45歳から74歳の男女約8万人を対象に赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて追跡調査を行ったコホート研究の結果を、2011年に発表しています。
女性では毎日赤肉を80グラム(調理前の重量。調理後は20%程度重量が減少する)以上食べるグループで結腸がんのリスクが高く、それ以下の摂取量ではリスク上昇はみられていません。
男性では鶏肉も含む肉全体では摂取量の最も高い第5グループ(約100g/日以上の群)で結腸がんのリスク上昇がみられましたが、赤肉では特に関連はみられていません。
また、加工肉については男女いずれにおいても、加工肉摂取による結腸・直腸がんのリスク上昇は見られませんでした。ただし、加工肉摂取量をもう少し細かく10グループに分けたところ、男性において最も摂取量の多い群で、結腸がんリスクの上昇が見られました(摂取量の少ない下位10%の群と比べ、上位10%の群では発生率が1.37倍)。つまり、日本人が一般的に食べるレベルでは、はっきりとしたリスクにはならないけれども、通常よりもはるかに多量に摂取する一部の男性では、結腸がん発生リスクを上げる可能性は否定できません。
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2869.html
大腸がんの発生に関して、日本人の平均的な摂取の範囲であれば赤肉や加工肉がリスクに与える影響は無いか、あっても小さいと言えます。
日本人の赤肉・加工肉の摂取量は世界的に見ても低く、平均的摂取の範囲であれば大腸がんのリスクへの影響はほとんど考えにくいでしょう。
ただし、欧米でも多いとされる量の摂取であればリスクを上げる可能性は高いと思われます。
また今回、IARCにより発がん性ありと判定された加工肉についての科学的証拠は大腸がんを主体としたものであり、健康全般を考慮した観点に立った場合には、他の疾患への影響も考慮する必要があります。
赤肉はたんぱく質やビタミンB、鉄、亜鉛など私たちの健康維持にとって有用な成分もたくさん含んでいます。飽和脂肪酸も含まれ、摂りすぎは動脈硬化、その結果としての心筋梗塞のリスクを高めますが、少なすぎると脳卒中(特に、出血性)のリスクを高めることが分かっています。日本においては心筋梗塞より脳卒中の罹患率の方が高いことから、総合的にみても、今回の評価を受けて極端に量を制限する必要性はないと言えるでしょう。
詳しく知りたい方はコチラ
(参考)国立研究開発法人 国立がん研究センターHP
「赤肉・加工肉のがんリスクについて」
(2015年10月29日)別ウインドウで開きます(外部サイト)
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2015/1029/index.html
過去の日本の大規模な研究結果によれば赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて、日本人の平均的な摂取の範囲であれば赤肉や加工肉がリスクに与える影響は無いか、あっても小さいと言えるとありました。その上で世界の様々な研究結果を基にがんとの関連性をグループ分けしているIARCの公表に目を向けない訳にはいきません。
これらを踏まえて、赤肉と加工肉の過剰摂取は大腸がんに罹る可能性があるので、出来る限りリスクを抑えて摂取の範囲内にするためにも赤肉や加工肉の摂り過ぎに気を付ける事が大切だと思います。世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)による報告書では、赤肉の摂取を週に500g未満とするよう推奨しています。
赤肉・加工肉の摂取が増えれば大腸がんのリスクが増加する事を知った上で食べるのと、知らないまま食べるのとではある程度の自制にも繋がると思いますし、今後長い期間で見た時に摂取量においても違いが出るのではと思います。自分自身、赤肉である牛肉を全く食べていないのかと聞かれれば食べていますし、むしろ牛肉は好きです。個人的にはハムやソーセージなどの加工肉は好きでよく食べていたのですが、このことを知ってからは以前に比べて意識的に控えるようになり摂取量はかなり減りました。
以上の事から、脂肪燃焼の効率を上げる為にカルニチンを増やしたいからと言ってカルニチンが多く含まれる赤肉や加工肉を手放しで勧められないのはこのような理由からです。代替え案の一つとしてカルニチンを摂取するのにサプリメントから補うという方法があります。
大腸がん
国立がん研究センターがん情報サービス『がん統計』より引用
2019年 臓器別がん罹患数 男性2位、女性2位
2021年 臓器別がん死亡者数 男性2位、女性1位
となっています
③体脂肪の燃焼
カルニチンによってミトコンドリア内まで運ばれたアシルCoAはβ酸化によってアセチルCoAを産生します。
アセチルCoAがこの先の酸化機構であるクエン酸(TCA)回路に入り、次に電子伝達系という代謝反応を経てATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーを持つ分子が産生されます。クエン酸回路ではエネルギーを産生するためにはなくてはならない必要不可欠な物質があります。
それが酸素です。酸素を使ってエネルギーを生み出しているのです。
なので脂肪が燃焼する過程において酸素を使ってエネルギーに変えているので、有酸素運動が効果的と言えるのです。有酸素運動時にミトコンドリア内では取り込んだ酸素を使って体脂肪の代謝物であるアセチルCoAをエネルギーに変換しているのです。
ちなみに高強度で行う筋トレなどは無酸素運動と言われています。
低強度で行うジョギングやペダルを脚で漕いで行うバイクマシンなどが有酸素運動と言われています。
これについて高強度の筋トレ時も呼吸して酸素を摂り込んでるのではと思われるかもしれません。
少し難しい話になりますが高強度で行う筋トレなどの無酸素運動時には、酸素を使わないでATPを産生しているATP-PCr系や解糖系という身体の機能でエネルギーになるATPを産生して行っています。
ジョギングなどの低強度で行う有酸素運動ではミトコンドリア内で酸素を使ってエネルギーになるATPを多く産生しています。
つまり有酸素運動と無酸素運動の違いとは、身体の機能的に酸素を使ってエネルギーをたくさん作りながら行う主に遅筋を働かせる運動か、酸素を使わないで限られたエネルギーで主に瞬発的に行う速筋を働かせる運動かの違いの事であって呼吸は常にしています。当然のことながら、無酸素運動の方がその時に蓄えている限られたエネルギーの中で行う上にパワーを出す際にエネルギー消費も激しいのでバテるのも早いです。有酸素運動と無酸素運動の間に明確な隔たりがある訳ではなく、その時に行う運動によって身体の機能が順応しているイメージで良いかと思います。
また、クエン酸回路が回ってエネルギーを産生する為にはオキサロ酢酸という物質が必要になります。このオキサロ酢酸はブドウ糖が分解して作られます。
つまり、脂肪がクエン酸回路でエネルギーとして代謝されるためにはブドウ糖(糖質)が必要である事がこのことから分かります。
【脂肪は糖の炎で燃える】と言われるのはこのためだそうです。
まとめ 体脂肪燃焼に有酸素運動はおすすめ
体脂肪が燃焼するためには①分解⇒②運搬⇒③燃焼の過程があって、この過程を効果的に行えるのが、酸素を取り込みながら行う有酸素運動ですというお話でした。なので、脂肪燃焼したい方は有酸素運動を取り入れてみてはいかがでしょうか?
ただし過度な運動は、活性酸素の産生を促し酸化ストレスを引き起こす可能性もあるので、赤肉や加工肉の過剰摂取を気を付けるのと同様に、過度な運動は控えて適度に運動するようにしましょう。
最後まで読んで頂きましてありがとうございました。