糖尿病になるとどうなるのか?

糖尿病は生活習慣病であり誰もがかかる可能性があります。

これをご覧下さっている方はきっと健康意識が高く、糖尿病という生活習慣病を何度も聞いた事があるのではないでしょうか?糖尿病は自覚症状のないまま徐々に進行していき、初期症状が現れ始めて、更に悪化すると命に関わる様々な合併症を引き起こす怖い病気です。発症の要因として遺伝的要因と環境的要因が複合的に関係しています。では実際に糖尿病にかかるとどうなるのか、普段の環境的要因である生活習慣の中で糖尿病にかからないために気を付けるべき点を以下にまとめました。

糖尿病とは

【血糖値】という言葉を聞いた事があると思います。人間の血液の中を流れるブドウ糖(グルコース)の濃度の事です。このブドウ糖は脳や筋肉などの大切なエネルギー源になるのですが、血液を流れるブドウ糖の量が増えると濃度が高くなり高血糖状態になってしまいます。高血糖状態(血糖値が上がった状態)のままだと、血液がドロドロの状態になり、血管を傷つけたり身体に危険な様々なトラブルを引き起こします。高血糖状態のままでは危険なので、インスリンというホルモンが作用して身体の中にブドウ糖を取り込むことでブドウ糖をエネルギーとして使う事ができ、ブドウ糖の量が減る事で血糖値が下がり、高血糖状態を防ぐことができます。しかしインスリンの働きが不足したり作用が低下すると、ブドウ糖が上手く体内に取り込まれず高血糖状態が慢性的に続いてしまいます。これが糖尿病です。

糖尿病の怖い合併症

糖尿病にかかっても初期の段階では自覚症状がまったくない事が多く、症状があらわれるとしても非常にゆっくり、少しづつあらわれます。合併症まで知らず知らずのうちに進行していて、気が付いた時には日常生活に支障が出てきています。更に症状が進行して合併症になってしまうと、とても怖い症状となって現れはじめます。

糖尿病の3大合併症は〖し・め・じ〗

①し=神経障害

高血糖状態により手足の神経に異常をきたし、足先や足裏・手の指に痛みやしびれなどの感覚異常が現れる合併症です。痛みが慢性化してしまったり、進行すると神経感覚が低下するので、痛みや温度を感じづらくなってしまい、知覚神経が感じないので靴ずれや、やけどを起こしやすくなります。負の連鎖で高血糖状態は身体の免疫力を低下させるので、傷が出来てしまうと細菌が増殖して化膿しやすくなります。そのまま気付かずに放置すれば靴擦れややけどでは済まされない潰瘍(えそ)や壊疽(かいよう)などの重症な足病変に進行することもあります。更に血流障害が起こります。糖尿病に罹ると糖尿病ではない人に比べて約5倍も下肢血流障害がおこりやすく、進行も早いと言われています。しびれや冷感を感じるようになって次第に疼痛になり、最も進行してしまうと足指の潰瘍(えそ)や壊疽(かいよう)といった状態となり最悪の場合は切断しなくてはなりません。

②め=目の障害

糖尿病網膜症は高血糖により、目の網膜にある非常に細い血管がむしばまれていく合併症です。進行してしまうと失明に至ります。糖尿病網膜症は自覚症状がないまま進行していきますので、手遅れになる前に早期発見と進行予防、病院での眼底検査が必要です。

③じ=腎臓の障害

糖尿病腎症は高血糖により、腎臓にある非常に細い血管がむしばまれていく合併症です。進行すれば、老廃物を尿として排泄する腎臓の機能が失われてしまうため、最終的に透析治療をすることになります。自覚症状がないまま進行していきますので、定期的な腎臓の検査が必要です。

糖尿病は動脈硬化を引き起こす

糖尿病は血管にも悪影響を及ぼします。それが動脈硬化です。動脈硬化は喫煙・コレステロール・高血圧・肥満・運動不足などの様々な危険因子が重なる事によって発症しやすくなりますが、糖尿病も動脈硬化の要因の一つです。動脈硬化の先に待っているのは心筋梗塞や脳梗塞などの死に至るリスクが高い疾患です。毎年日本で1年間に約6万人もの人が心臓突然死で亡くなっているそうです。

糖尿病は合併症を含めた重篤な疾患の入口になってしまう怖い病気です。糖尿病になってしまう前に予防することが大切です。特に健康診断で糖尿病予備軍と言われた方は明らかに糖尿病になる確率が上がっているので、生活習慣の改善が必要です。そして気づくための定期的な検査が必要です。

日本の糖尿病者数は年々増え続けている

 糖尿病患者数の状況

「糖尿病が強く疑われる人」及び「糖尿病の可能性を否定できない人」の推計人数の年次推移(万人)

糖尿病が強く
疑われる者
糖尿病の可能性を
否定できない者
糖尿病が強く疑われる者と
糖尿病の可能性を否定できない者
1997年 6906801,370
2002年 7408801,620
2007年 8901,3202,210
2012年 9501,1002,050
2016年 1,0001,0002,000
資料:厚生労働省健康局「平成28年国民健康・栄養調査」より抜粋

年齢階級別「糖尿病が強く疑われる人」及び「糖尿病の可能性が否定できない人」の推計人数(2016年)(万人)

糖尿病が強く疑われる人糖尿病の可能性が否定できない人
20~29歳7.3 4.5
30~39歳 15.4 17.0
40~49歳 53.4 93.0
50~59歳 144.5 160.7
60~69歳 309.3 255.9
70歳以上 472.7 477.2
資料:厚生労働省健康局「平成28年国民健康・栄養調査」より抜粋

上記の日本の糖尿病者数は、《糖尿病の可能性を否定できない者》は上げ下げを推移していますが、《糖尿病が強く疑われる者》は徐々に増えていってます。資料は2016年までのデータとなり、現在のデータが見つけられなかったので現在の糖尿病者数はわかりませんが、2016年以降も糖尿病患者数が増えている事は容易に予想されます。さらに昨今の新型コロナウィルスの影響で外出を控えたり、自宅で過ごす時間が増えた事により、運動や身体を動かす機会が減っている事も糖尿病を含めた生活習慣病の発病に繋がる要因に拍車をかけてしまっていると考えられます。

下の図から糖尿病は高齢になるに従ってかかる人が増えている事がデータから読み取れます。特に40代以降から急激に増えている事が図から見てわかります。

これは加齢とともにインスリンの分泌が低下する事、内臓脂肪率の増加や筋肉量の減少や身体活動(運動量)の低下などによるインスリンの効きが悪くなる事などから糖尿病に罹りやすくなってしまうと考えられます。

2型糖尿病が大部分を占める

糖尿病には1型・2型・妊娠糖尿病がありますが、全体の95%が2型糖尿病であり、日本で糖尿病と表現した場合は2型糖尿病のことを示すことが多いです。

2型糖尿病は遺伝的要因と環境的要因が複合的に身体に影響することで発症する

大部分を占める2型糖尿病は両親から受け継がれた元々の遺伝的要因である体質によるインスリン分泌能の低下に加えて、環境的要因としての普段の生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が合わさって、インスリンの相対的不足に陥った場合に発症します。両親が糖尿病に罹っているとその子供は糖尿病を発症しやすい傾向があります。ただし、病気そのものが遺伝するのではなく、インスリンの分泌が低下する事やインスリン抵抗性を起こしやすい体質が遺伝するという事です。生活習慣からの悪影響だけではなく、2型糖尿病の人は大なり小なり糖尿病になりやすい体質(遺伝的素質)を持っているとも言えます。

糖尿病を防ぐためには

体質は元々持っている遺伝的要因なので改善することは難しいのですが、たとえ糖尿病を発症しやすい体質を受け継いでいたとしても、環境的要因である普段の生活習慣を糖尿病を遠ざけるために見直して改善するように行動すれば、糖尿病の発症の確立を抑える事ができます。ここでは糖尿病の発症を未然に防ぐために普段の生活習慣で気を付けるべき事を書きました。

予防①

糖質の摂り過ぎに注意する

糖質は脳や筋肉のエネルギーとして使われ、生命が維持するための大切なエネルギー源であることは間違いありません。しかし現代の食事では、あらゆる物に糖質が入っているので、気にしないで食べたり飲んだりしていると、知らず知らずのうちに必要以上に糖質を摂り過ぎてしまいます。毎日の一食の中で[炭水化物+炭水化物〕、[糖質がたっぷり入った甘い缶コーヒー+お菓子〕のような【糖質過多】の食生活についなってしまっている方もいるのではないでしょうか?私も気を付けていないとこのような食事になりがちです。

糖質を一度に摂れば摂る程に血糖値が上がってしまうので、それを下げようとインスリンが血中から各器官にブドウ糖を摂り込みます。摂り込まれたブドウ糖はエネルギーとして必要としている脳や肝臓や筋肉などの各組織で使われます。余ったブドウ糖は肝臓や筋肉にグリコーゲンとして一定量蓄えられます。更に余ったブドウ糖はどこに行くでしょう?備蓄のエネルギーとして身体に一旦蓄えておこうと脂肪として蓄えられる事になり、これが繰り返されると肥満に繋がってしまうのです。

また、食べ物の中でも血糖値が上がりやすい食べ物があります。(高GI食品)糖質が含まれる清涼飲料水などの液体も咀嚼をせずに胃をすり抜けて行きますので、血糖値が一気に上がりやすいです。急激に血糖値が上がればインスリンは慌てて血糖値を下げようとするので、ブドウ糖を急激に摂り込みやすくなります。その時、グリコーゲンとしての蓄えも十分あったら、ブドウ糖はどこにいくでしょう?そうです、脂肪になりやすいのです。しかも液体として急激に摂り込まれるので、グリコーゲンの蓄えが足りていたら脂肪になりやすいと考えられます。なぜ運動不足が身体に良くないのかは、ここに繋がってきます。運動などで身体がエネルギー消費していない事で、グリコーゲンも使われることが減って、糖質などの摂取したエネルギーが脂肪になりやすいからです。自身の消費カロリーに対しての適切な糖質摂取は必要ですが、糖質の摂りすぎや急激に血糖値が上がってしまう食べ物、飲み物は脂肪になってしまう可能性が高くなるので注意しましょう。もちろん、脂肪のなさすぎはそれはそれで身体によくないですが、身体の脂肪が増えて行けば肥満体型になってしまいます。

予防②

インスリンの働きを正常に保てる身体にしておく事が大切

糖尿病を発症しないためには、インスリンの効きが悪く(インスリン抵抗性)ならないように正常に保てる身体にしておく事が大切です。逆に言えば、インスリンの効きが悪くなる要因を知り、普段から気を付けていることが大切です。

インスリンの効きが悪くなる要因6つ

1.遺伝 

両親や親戚に糖尿病にかかっている人がいると普通の人より糖尿病を発症する可能性が高いタイプであるという事です。このタイプの人は糖尿病にならない為にも、下記の2~6を気を付ける必要があります。

2.肥満

肥満によって脂肪細胞が増加すると、インスリンの働きを悪くする生理活性物質である「アディポサイトカイン」が放出され、筋肉や脂肪などの組織、肝臓へブドウ糖が摂り込まれにくくなります。米国スポーツ医学会の定義では体脂肪率が男性では25%、女性では32%を上回ると、その人は「肥満」であると見なされます。脂肪過多の人は、たとえ他の危険因子を持っていなくても、心臓病と脳卒中になる危険性が増加します。太り過ぎにより心臓への負担が増加するので、肥満は健康的ではありません。肥満は血圧、血中コレステロールと中性脂肪濃度に影響するので、心血管系疾患に直接関連し、糖尿病を発症する可能性が更に高くなります。

3.運動不足

運動することにより、筋肉を動かしカロリーを消費して、全身の血液やホルモンの巡りが良くなり、精神的にも気分の良さを感じる事ができます。鬱々とした気分を解消することが出来ます。活動代謝が上がることにより脂肪燃焼効果が期待できます。特に30代以降は、筋肉量が年間1%づつ減っていきますので、エネルギー消費量が減っていく事になります。何もしない運動不足だと、必然的に筋肉量が減っていき活動代謝が下がるので、消費できない摂取カロリーは脂肪に形を変えて身体にため込む事になります。普段から、運動不足を感じていて何からすればいいのか分からない場合は、散歩やジョギングなど身体を動かすことから始めると良いでしょう。有酸素運動ではエネルギーの生産工場であるミトコンドリアが増える事が分かっていますので、疲れやすい方は有酸素運動をしてみるのも良いと思います。個人的には筋肉量を増やせる筋トレがおすすめです。私がパーソナルトレーナーとしてお役に立てるのはこの運動と食事管理です。

4.高脂肪食

高脂肪の食事を摂ると、具体的には高脂肪の食事をわずか5日間摂り続けただけで、ブドウ糖を筋肉に摂り込むインスリンの働きが悪くなるという米国のウ”ァージニア工科大学の研究で明らかになったそうです。高脂肪食の食べ過ぎは肥満を招き、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、動脈硬化が起こりやすくなります。しかし、脂質も細胞膜やホルモンの原材料であり、糖質と同じように身体にとっては大切なエネルギー源なので、摂らなすぎも良くありません。せっかく摂るのであれば魚の油(EPA,DHA)などの良質な油を摂るようにしましょう。

5.ストレス

ストレスは精神疾患に影響すると考えがちですが、糖尿病のような慢性疾患にも影響します。人間関係でストレスを感じている人もいるのではないでしょうか?職場で過大な仕事を要求されて強いプレッシャーを感じている人では、そうでない人に比べて、2型糖尿病を発症するリスクが45%上昇することがドイツのある調査で明らかになったそうです。仕事のストレスと糖尿病とは関連があることが示されました。肥満のない人でも、ストレスが多いと糖尿病の発症が上昇していたそうです。ストレスを感じると交感神経が活発になり、血糖を上げるグルカゴンやアドレナリン、甲状腺ホルモンなどが働き、血糖値が上昇しやすくなります。過剰なストレスにより、分泌量が増えるコルチゾールも血糖値を上昇させます。

ストレスは誰もが感じるものです。上手く対処していかなければ、心身ともに病んでしまいます。運動をしてみる、休養を取る、森林浴をしてみる、少し環境をかえてみる、リフレッシュできる趣味や娯楽に没頭してみるなど、自分にできる事からやってみて上手くストレスを受け流していきましょう。一人で抱え込まずに誰か信頼できる人に相談するのも一つの手です。よく眠れない、イライラすることが多くなってきた、憂鬱感が強くなってきたなどは心の不調から来るストレスのサインかもしれません。周りに信頼できる人がいないのであれば、心療内科や精神科の専門医に話してみる事で改善できるかもしれません。あなたは十分にがんばっています。ストレスを抱え込みながら、もう無理をしなくても良いのではないでしょうか?

6.睡眠不足

睡眠不足は、メンタルがやられてしまいます。メンタルが落ち込みやすくなり、怒りやすくなったり、周りとの人間関係が悪くなることも懸念されます。事故や病気のリスクも上がってしまいます。糖尿病にも繋がる可能性がある影響があります。睡眠不足は糖尿病がない人においても強制的に睡眠不足にすると、交感神経が活性化されコルチゾールが分泌され、インスリン抵抗性を増大させたという報告があります。また、睡眠不足により、食欲を抑制するホルモンであるレプチンが低下し食欲を亢進させるホルモンであるグレリンが上昇するという報告があります。これにより、生じる食欲増進は当然、血糖値を上げる事に繋がってしまいます。快眠は心身を守る為にも大切な役割を持っています。
 

糖尿病にかからないためにできることがある

もしもあなたが健康診断で糖尿病予備軍とお医者さんに診断されていたり、最近太ってきたなどの心配事があり上記の事が思い当たるのであれば、糖尿病を予防するために普段の生活習慣で改善できる事はあるはずです。

たとえ糖尿病を発症してしまったとしても、定期的な検査を受けて、医師の適切な指示を守り、治療と生活習慣の改善を続けて行くことで上手くこの病気と向き合い、糖尿病が引き起こす合併症になることを未然に防ぐことができると思います。

あなたのこれからの健康を維持するためにできることがあります。