ダイエット前に知っておきたい脳の仕組み

ダイエットすると意気込んで始めてみたものの、必ず向き合うことになるのが自分の食欲。

「わかっているけどつい食べてしまう。」

「何で止まらないんだろう。」

こんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか?

更には

『なんて自分は我慢ができない人間なんだろう・・。』

と自分を責めてしまい自己嫌悪に陥ってしまう人もいるのではないでしょうか?

でもつい食べてしまうのは、あなたが我慢できない人であったり意思が弱いからではなく、そもそも脳のある仕組み・メカニズムが原因で食べてしまってるかもしれないとしたら、あなたはその脳の仕組みを知った上でダイエットに取り組みたいと思いませんか?

この記事を読むことで”つい食べてしまう”脳の仕組みが分かります。ご自身の健康の為にもダイエットの成功率を上げる為にも知識として知っておいた方が良い知識です。つい食べたくなる3つの食べ物についても書いていますので是非読み進めてみて下さいね!

食欲に影響している神経伝達物質【ドーパミン】

あなたはドーパミンという脳内の中枢神経系に存在する神経伝達物質をご存じでしょうか?

ドーパミンは ”快感や多幸感を得る” ”意欲を作ったり感じたりする” といった機能を担い、動機・学習などに重要な役割を担っていると言われています。ある実験では、快(好ましいと感じること)情動の誘発よりもむしろ欲求(欲しいと感じて行動を起こすこと)の亢進に関係しているようであるとの見解もあります。

私たちの脳内には、はっきりとはわかっていないもののおよそ1000億~1500億もの神経細胞があると言われています。脳はそれぞれの部位が神経細胞(ニューロン)によって情報伝達されていることで脳の働きが成り立っています。神経細胞同士のつなぎ目(シナプス間隙)で、ドーパミン、セロトニン、アドレナリン、ノルアドレナリン、アセチルコリンなどの神経伝達物質がやりとりすることで情報伝達しています。

ドーパミンが働く主な経路には3つあり、その神経細胞のネットワーク、通り道の一つに脳内報酬系(A10神経)と呼ばれる神経系があります。中脳の腹側被蓋野という場所を起点にして側坐核を経て前頭前皮質(前頭前野)に至る神経系です。この脳内報酬系のドーパミンは快情動を仲立ちにして人や動物を行動に駆り立て、その意欲を強めていると考えられるようになりました。脳内報酬系は環境の中から生存に必要なもの(食物や繁殖の相手など)を見つけ、それに向かって体を動かすための神経系なのです。

この脳内報酬系でドーパミンが伝達されることで報酬系の神経が活性化されていきます。ある行動によって脳の偏桃体という場所に〖快〗という感情が起こると、腹側被蓋野にドーパミン放出の信号を出します。ドーパミンが側坐核に放出されると快感・やる気が起こります。これらの領域は記憶の領域とも密接に関係しています。更に報酬系は前頭前野(前頭連合野)にも影響していて、ドーパミンがこの前頭前野に放出される事に問題があります。

食欲を抑えられなくなる理由

私たちの接触行動には、生体のエネルギーレベルを感知してエネルギー消費や代謝やホルモンを調節しながら生命維持する視床下部や脳幹の働きによる恒常性の摂食行動と、ドーパミンなどが影響する快楽・快感からの摂食行動があり、他にもストレスや睡眠、腸内環境など様々な要因が複合的に合わさって摂食行動が起こっています。

脳の前の方で額のすぐ後ろにある前頭前野は思考・判断・創造・記憶や感情の抑制やコントロールなど、様々な高度な精神活動を司っている脳の中の脳とも呼ばれている重要な領域です。

前頭前野にドーパミンが放出されると、理性や感情や行動の抑制などを司っている前頭前野にドーパミンの作用が影響していると考えられています。ドーパミンは強い欲求を引き起こすので、これら前頭前野の正常な判断に影響を及ぼす為に食欲が止まらなくなったり、食べ過ぎてしまうのです。『また食べたい』と思ってしまうのは、この快楽的な情動が記憶にすでに刷り込まれているからです。ある研究でドーパミンはこの先何か良い事があると感じた時に出るらしいということが分かってきました。ここでいう良い事とは、食べた時の快の感情です。ドーパミンが出る事で欲求を高めてしまい、食べてしまうことで快の感情がドーパミンを出し、もっと食べたいと感情を高めます。つまり頭では食べちゃダメだと分かっているのについ情動的に食べてしまうのは、私たちの脳はすでに”ある食べ物”を食べれば〖美味しい‼️〗〖甘〜い‼️〗と快感が得られることを記憶で覚えていて、快が得られると感じてドーパミンが出てしまい、欲求行動・情動が抑えられずに食べてしまうと考えられるのです。

ドーパミンは摂食中枢を刺激し、レプチンなどの食欲抑制機構の働きを圧倒してしまいます。

このようにドーパミンは私たちの〖食べたい〗という欲求に深く関わっています。飲食物の中にはこのドーパミンの放出をより高めて脳内報酬系を活性化させてしまう、つい食べてしまう”食べ物”があります。事前に知っておくことで、客観視しながら気を付けようと注意して食べ過ぎを防げるだけでなく、ダイエットにも役立つと思いますので以下に挙げておきます。

ドーパミンを誘発してつい食べたくなる3つの食べ物

①甘い物 糖類

砂糖、果糖ブドウ糖液糖の入ったジュース、人工甘味料(アスファムテール・スクラロースなど)、天然の黒糖、天然・人工に関係なく甘い物全般

甘い物が無性に食べたくなる時はドーパミンが突き動かしているかもしれません。甘い物は全般的にドーパミンが出ます。脳に最も即効性のあるエネルギー源がブドウ糖ということからも、脳が喜び、欲していることからドーパミンが出る事が頷けます。単糖類・2糖類などの糖類は消化・吸収が速く血糖値が上がりやすい為、ダイエットに限らず生活習慣病予防の為にも摂り過ぎに注意が必要です。

②植物性脂肪・動物性脂肪 

動物性脂肪(飽和脂肪酸)、植物性の油全般

人間の祖先は飢えに耐えながら生きてきた歴史があります。炭水化物やタンパク質よりも倍以上のカロリーがあり、最も効率的にエネルギーとして身体に蓄えられる脂質(脂肪)は古来から人間は飢えに耐える為に必然的に摂っていたと考えられます。生き永らえるために必要だった脂質を〖美味しい〗と感じるのは本能的ともいえます。美味しいと快を感じる脂質を食べれば、ドーパミンが出る事で脳内報酬系を刺激して食べたくなります。更に脂質は摂り続けていると視床下部にある満腹中枢のコントロールを乱れさせ、満腹感が感じずらくなってしまい、もっと食べたいドーパミン欲求と重なって大量に脂肪を摂取してしまうことにもなります。しかしながら脂質には身体の構成要素としての大切な役割もあり、脂質の一種であるコレステロールは全身の細胞膜の原料になったり、性ホルモンの原料にもなる大切な栄養素です。摂取する脂質の質・適量が大切であるのに対し、脂質摂取を意識してない現代人は、この飽食の現代において知らず知らずのうちに脂質の摂取過多になっています。快楽を求めて食べ続けていれば脂質摂取過多による肥満やメタボ・生活習慣病になるのに時間はかからないでしょう。

③超加工食品

菓子パン、スナック菓子、冷凍食品、インスタントラーメン、成形肉

これらは糖類・脂肪が多量に含まれている事からドーパミンも出やすいことに加えて塩分も多く含んでいます。原料に食品添加物や加工食品を使用しているので摂取量が多い人ほど肥満率、生活習慣病での死亡リスクが高いです。

これら3つの食べ物は現代に多く流通していて、近所のスーパーやコンビニでも簡単に購入することができます。現代社会においてこれらは手軽に口にできて安価なので、『甘い』『美味しい』と快を感じたい為に摂り過ぎてしまう傾向があり、意識しなければ簡単に口にしてしまう物ばかりです。しっかりと食材選びをしなければ、病気になりやすい現代であるとも言えます。何を食べるかよりも、いかにこれらをなるべく摂らないようにするかが問われているようにも思えます。これからダイエットを始めようと思う方は、これら3つの食べ物はドーパミンの作用によって食べ過ぎてしまう可能性が大いにあるので注意しなければいけません。僕自身、甘いものが好きですし、加工食品を食べる事ももちろんあります。これらの摂取をゼロにすることは難しいですが、脳内で発するドーパミンによって情動的に食べたくなってしまう事を知っていれば、負のスパイラルに陥る前に、これらを買う前にちょっと引いて考えられるのではないでしょうか?

ドーパミンは依存症の要因

ギャンブル依存症やアルコール依存症などは、実はこのドーパミンによる脳内報酬系の働きが関わっています。脳は〖快感〗という感覚を条件反射のように記憶し、また同じ快感が得られるように同じ快感を繰り返すようになります。そして病的に自分では情動を抑えられない状態まで行ってしまいやめられずに繰り返してしまうのが依存症です。

ドーパミンは快感や多幸感が得られたり、やる気が出て前向きになれたりと人間が生きていく上でなくてはならない必要不可欠な物質である反面、その作用が強く働き過ぎてしまうことで依存症にもなってしまう程に強力で意識下ではどうすることも出来ない怖い面も持ち合わせています。

ドーパミンの作用

情動的な(本能的で無意識の)判断による行動が、例えば美味しい餌を獲得したとか、良き生殖相手と関係を結べたなど、動物の生存・繁殖にとって有利な結果に導かれた場合には、腹側被蓋野からのドーパミン神経系が側坐核に対して報酬信号を送り、その行為を記憶して反復するように学習・記憶の設定が起こります。このようにして学習・記憶された行動は、次に示す大脳皮質-視床-基底核ループ内に行動パターンとして記憶・蓄積され、同じ状況では同じ行動が自動的に発現するようになります。大切な事は、これらの情動的な行動選択はほとんどの動物種では本能的で無意識な自動的選択として実行されているということです。

ドーパミンと側坐核の情動コントロール回路 著者:林 隆博(西焼津こどもクリニック院長)より抜粋

まとめ ドーパミンの作用を知って上手に向き合おう

今回は神経伝達物質であるドーパミンに注目して書きましたが、いかがでしたでしょうか?

これからダイエットを始めようと思っている方は脳内で起こるドーパミンの作用を理解することで、ドーパミンが出て食べ過ぎてしまう食べ物の抑止に繋がったり、ダイエットを成功させる一助としてこの記事を活かして頂けましたら幸いです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

参考書 【ビジュアル図鑑 今と未来がわかる 脳と心】 毛内 拡 監修

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